ドイツの劇場にはどんな職業の人が働いているの? ~運営陣・前編~

バレエ&劇場

どんな方がこのタイトルに興味を持って下さるでしょうか。将来的にプロの道を目指すバレエダンサーやオペラ歌手、もしくは音楽家? あるいは舞台俳優や、人形使い? はたまた劇場の裏方を目指す方たち?

この記事では、皆さんが興味を抱かれているドイツの歌劇場というひとつの『会社』が、はたしてどういった部員・部署で構成されているのか? そちらをドイツ語での役職名と共に、その役割をなるだけ分かりやすくお伝えしていきたいと思います。カッコ内に併記したカタカナを読んで、ちょっとドイツ語を話している気分になってくださいね!笑

もちろんドイツに留まらず、これから歌劇場や劇団に所属する方の参考になれば幸いです。

こちらは前編になりますが、後編の

見出し
  • 音楽総監督
  • オペラ監督
  • 合唱監督
  • バレエ監督
  • 演劇監督
  • 人形劇監督
  • 舞台技術監督

について知りたい方はこちらから後編に飛んでくださいね。

それではいってみましょう!

Theater Leitung = 劇場の運営陣(テアター ライトゥング)

実は一口に運営陣と言っても、劇場によってその定義はかなり曖昧です。大きな決断に関わるだけならほんの数人しか入りませんし、重要な情報もつつぬけという点を考慮するなら秘書さんなども含めなければなりません。

この前後編では、分かりやすい役職名がついている人々(~監督や、チーフ~など)を紹介していきますね。

Generalintendant = 総監督(ゲネラール インテンダント)

劇場の『首脳』です。

運営方針の舵をきる、いわば船長の役目を果たす方ですね。方向を間違えれば最悪、船は大破します!

州立、市立劇場は地方ごとの支援によって成り立っているため、巧みな話術で政治家から予算をぶんどってくるのがお仕事とも言えます。ぶんどるだなんて物騒な響きですが、ワーグナーがまだ生きているわけでもあるまいし、芸術に言い値の予算を割いてくれる政治家や貴族の方々はこのご時世には存在しません。

ですので、劇場が地域にどれだけ貢献できるか? そのビジョンをうまくプレゼンテーションできる事がこの役職の必須事項なのです。

そして気に留めておきたいのがこのポストの交代時期。

  • この方が契約の延長を希望するか?
  • そして実際に市議会の可決により契約が延長されるかどうか?

上記の2項目は被雇用者の契約に、密接に関わってきます。

例えばバレエ監督が入れ替わる際、芸術の方向性なども必然的に変わるため、そこにいたダンサーたちの首がごっそり切られる…。そんなシビアな話も、実は珍しくはありません。

総監督が入れ替わる際にも、それと全く同じ事が起こりえます。つまりいくら自分の直属の上司と良好な関係を築いていようとも、管理職であろうとも、皆等しく解雇のリスクを負っているのです。

例外はこの2つ。

  1. 15年以上同じ職場に留まり、卓越した技能を証明し続ける事で雇用形態が終身に格上げされた、ソロ及びアンサンブル契約の方
  2. 初年度のお試し期間を通過した時点で2年目からは自動的に終身雇用になる、オーケストラとオペラ合唱団の方々

上記にオペラ合唱団は終身雇用と書きましたが、最近の規則改正でそうではなくなった可能性がでてきましたので、改めてリサーチしたいと思います。

人によってリスクにもチャンスにもなり得るこの機会は、移動を考えていなくとも注視しておきたい所です。

後に紹介する「オペラ監督」や「演劇監督」との兼任をする方も多く、その場合は忙しい合間を縫って、作品の演出に携わります。

Geschäftsführer = 財務責任者(ゲシェフツ フューラー)

劇場の『お財布』です。

財務戦略の立案、執行をします。例えば総監督が「権利は高くつくがこの作品をやりたいな。ソリストに有名な〇〇氏を呼んで。演出も人気の〇〇氏を。セットと衣装も豪華にして。迫力がほしいからエキストラも沢山雇おう」と芸術に意欲的であっても、それら全てを毎回叶える事は無理があります。

大きな声では言えませんが、私の以前の劇場は、この責任者がどんぶり勘定だったために破産しかけてます。(州の援助でなんとか助かりました…)

ですので、予算内でいかに効果的にやりくりするか。それがこの方の手腕にかかっています。事細かな問題には対応しきれませんので、例えばダンサーの方が練習用のシューズが足りないぞ、となっても直談判はできません。直属の上司に伝えましょうね。

また広報活動なども担う、極めて重要な管理職です。

劇場によって呼び名は少しずつ違い、「Verwaltungsleiter(フェアヴァルトゥングス ライター)」「Kaufmännischer Direktor(カウフメンニッシャー ディレクトーア)」などとも呼ばれます。

Künstlerische Betriebsdirektor = 芸術労務管理責任者(キュンストラリッシェ ベトリーブス ディレクトーア)

会社において一番の資材は「人」ですよね。こちらはその社員、全員の労働環境の管理を担う部署の責任者です。劇場の『カレンダー帳』といった所でしょうか。

管理室の通称は『KBB(カーべーべー)』。労働者の就業規則がしっかり守られているか、少人数体制でも厳格にチェックしています。

詳細には労働時間や休暇の審査だけでなく、日々における劇場全体のリハーサルや舞台の人材や時間、場所などが被っていないかまで把握しています。

公演に急な欠員が出れば派遣エージェントなどと連絡を取って補充し、ゲスト公演の予定調整なども行う。アーティストから裏方に至るまで、全ての部署と直接連結しており、問題を解決する。春先には来シーズンのスケジュールをほぼほぼ完成させてしまいます。

つまりは有り得ないほどマルチタスクな部署の責任者なんです! 明晰な頭脳と的確な指示が出せる人でないと務まりません。劇場によっては総監督の秘書でもあり代打でもある、責任感を伴う仕事です。個人的にはめっちゃ尊敬してます。笑

Chefdramaturg = チーフドラマトゥルク(シェフ ドラマトゥルク)

劇場の『歯車』です。

総監督が船長ならこの役職は『航海士』。とにかくこの人なしには天候も波も分からず、安全な航海は保証されません。

とはいえドラマトゥルクなんて職業、聞いたことないぞ…とハテナだらけの方も少なくないと思いますので、Wikipediaからの引用を。

ドラマトゥルク(独 Dramaturg)は、演劇カンパニーにおいて戯曲のリサーチや作品制作に関わる役職。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』2017年9月15日 (金) 18:20 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%82%AF

なるほど、分からん。って感じですね。私もこの方の仕事内容は(なにせ多すぎて!)掴みきれていないような気も致しますが、ざっくり説明していきます。

ドラマトゥルクの主要なお仕事に、パンフレットを作ることがあります。作品の解説に始まり、演出家・振付家・音楽家・演者へのインタビューなど。

ちなみに外国人の名前は特に間違いやすいのは分かるのですが、綴りが違うぞ、となればこの方の管轄です。初演の打ち上げ時に乾杯しながら、笑顔で「今度は間違えないでね」と軽く言うくらいなら許されます。笑

しかし来年度など、今後の作品を決める段階から、実はこのお仕事は既に始まっています。特に変化の激しいこの時代に合わせて、劇場は今どんな作品を上演すればよいか? どんな役割を担って、どんなメッセージを伝えたいのか? これからどうなっていくべきか? 波を読み、乗りこなしながら目的地へ向かうという意味でもさきほどの航海士という言葉がふさわしいような気がします。

それから人目に触れるお仕事には司会進行役もあります。コンサートや舞台の上演前後にガイダンスをしたり、お客様からの質問に答えたり。

まだまだこの方の部署は、複雑なお仕事を山ほど抱えています。

たとえば上演作品の版権の交渉、獲得。それに字幕の云々。既存の字幕が演出に適切でなければ、字幕を作ります。

舞台に使う楽譜の手配。どこの出版社から借りるか。演出を壊さず、目標の上演時間に収めるにはどの部分をカットするかなど音楽総監督と相談します。

リハーサルにも度々現れます。作品の解説をしなくてはならないので、演出家の意図を汲むため必要な作業ですよね。

時節に合わせたイベント発案など。夏なら野外企画だったり、イースターやクリスマスなど、キリスト教の行事にふさわしいアイデアを絞り出します。

4月頃は多忙を極めるでしょう。何故なら来シーズンの年間プログラムノートが印刷されるからです。ここでもデザインを考え、コンセプトを考え、テーマを大事にしながら劇場の全てを一冊にまとめあげます。

それでいて自分のお休みには知見を広げるためよその舞台を見に行くのだから、もうありえないほど働き通しの方です。

このように、表舞台よりも裏での地味な作業が多い職業になります。大きな決断を迫られる立場にはありませんが、それでもこの方がいないと劇場はうまく機能しません。

お客様と劇場を繋ぎ、総監督と各部長を繋ぎ、作品と演出を繋ぎ、演出と演者を繋ぎ、そして劇場と時代を繋ぐ。それゆえに劇場の『歯車』と言えるのではないかと思います。

まとめと後半のラインナップ

いかがでしたか? こちらの前編では、事務的な面で大きな役割を果たす4人の管理職をまとめました。どうしてあの人はいつでも忙しそうなのか、あのたまに見かける髭のおっちゃんは誰やねんといった疑問が少しでも解決できていたら幸いです!

後半はこんなかんじ!
  • 音楽総監督
  • オペラ監督
  • 合唱監督
  • バレエ監督
  • 演劇監督
  • 人形劇監督
  • 舞台技術監督

私を育んでくれた劇場のこと、沢山の方に知ってもらえると嬉しいです! もしこの記事が役立つかも、という方にお心当たりがあればシェアをよろしくお願いいたします。

不明瞭な点などあればお気軽に尋ねてください! 都度改良してゆきます!

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