ドイツの劇場にはどんな職業の人が働いているの? ~バレエ・指導者編~

バレエ

今回の記事では、ドイツの劇場専属バレエ団に勤める『稽古指導者(バレエマスター)』をご紹介します。ダンサーの仕事内容などが書かれた記事へはこちらからどうぞ!

今までに事務オペラ部門オーケストラに運営陣(後編)と同僚のご紹介をしていますので、そちらもあわせて読んでみて下さいね。

それでは早速参りましょう!

Ballettmeister = バレエマスター(バレット マイスター)

ドイツの劇場においてダンサーに稽古をつける指導者のことを、ドイツ語で『Ballettmeister(バレット マイスター)』と呼びます。古くはバレエ団の監督をそう呼んでいたようですが、近年では稽古指導者としての認知が一般的。ちなみに学校ではありませんので、教師という呼び方は致しません。

日本では見出しの通り、英語の『バレエマスター(ミストレス)』という呼び方が浸透しています。(世代によっては、ちょっとポケ〇ンマスターみたいに感じる方もいらっしゃるかも?笑)

指導というと先導リードするようなイメージを抱くかもしれません。しかし、この職業の実際の内容は『アシスト』。裏方でひたすらサポートに尽力するお仕事なのです!

振付家のアシスト

まずは振付家のアシストです。作品の意図を汲むことはセンスをも問われる重要な課題。振付家へ助言をしたり、振付家の不在時もダンサーに稽古をつけたりします。

実は、ダンサーは振りを与えられた時点ではできないことが多かったり、カウントも曖昧で全体が揃っていなかったりと、おそらくご想像以上にしっちゃかめっちゃかです。振付家の仕事は「振りを与える」ことですので、自身は振付に集中してその後のブラッシュアップをバレエマスターに任せる、という方も少なくありません。

振付家によって好みの踊り方や音の取り方、つまり『魅せ方』が違いますので、スタイルをよく理解した上で作品をまとめてゆかなくてはなりません。それゆえに振り写し中はダンサーと一緒になって体で振りを覚える方や、紙に書き留める方もいます。(でも練習をすすめるうち湧いてくる疑問はたいてい、紙に書き留められなかった細かい部分なんですけどね。笑)

普通スタジオの最低一面は鏡張りになっているものですが、それはダンサーが自身の見え方を確認したり、他者とのタイミングを計るためのもの。しかしずっと稽古の間じゅう鏡ばかり見ていては踊りになりませんし、本番中は言わずもがな鏡という補助はありませんので、指導者の目が鏡の役割を果たすのです。

バレエ監督のアシスト

言葉は悪いですが、バレエ監督の使いっ走りという見方も可能かもしれません。笑

ダンサーへの連絡や、双方の橋渡し的な役目も担っています。板挟み状態で、かなりストレスフルな職業であることは間違いないでしょう。バレエ監督もダンサーも、大体好き勝手ばかり言っていますからね。筆者個人的には、自分には絶対に務まらない職業だなと感じています。

バレエマスターは多くの雑務を引き受けてくれています。コロナ時にはダンサーをグループ分けして距離を保ちながら行っていたトレーニング。終わるごとに、使用していたバーを全て消毒して下さっていました。(バーはダンサーが支えとして使用する棒。アイキャッチ画像参照)

トレーニングでダンサーの体作り

稽古のみならず、日々のトレーニングでダンサーの体を作るアシストも。

ダンサーは毎朝のトレーニングでウォームアップと自己研鑽を図っている、と前回の記事でお伝えしました。トレーニングは、指導者が手本として見せる1分程度の短い振付をダンサーが覚え、それを曲に合わせて踊る。その繰り返しで進展してゆきます。

ダンサーのコンディションはダンサー自身が調節するものですが、トレーニングの内容によってもかなり左右されます。指導者は進行中の本番や当日の稽古、そしてそれによるダンサーの負担を十分に考慮した上で、内容を考えなければなりません。

例として、体力的にハードな本番が控えている午前中にきついトレーニングだと、ダンサーは疲労で実力を発揮できないかもしれません。それだけで済めばいいですが、大きな事故に繋がる可能性もあるのです。バレエマスターとダンサー、両者の細心の注意が必要ですよね。

また、ステップの組み合わせ(=アンシェヌマン)がクリエイティブだと楽しいですが、ダンサーが振りを追うことだけに気を取られ、自身の体に注意がいかなければ本末転倒です。だからといって簡単すぎるステップの組み合わせばかりでも、応用力が衰えてしまいます

このように、目的に合わせたトレーニングのハードル設定はとても大切なんですね。そういったさじ加減は、本当に難しいと思います!

自由参加になりますが、本番前のウォームアップもバレエマスターが担当しています。いかに体力を削らずダンサーの体を温め、集中力を高めるかが彼らの手腕にかかっています。

稽古計画表の作成

稽古のスケジュールを組むのも、バレエマスターの仕事のうち。

ダンサーの稽古は、普段は作品を曲ごと(曲が長ければパートごと)に区切って、バランスよく練習してゆきます。食事の栄養のように、偏りすぎてしまっては後から後悔しますので、

  • 稽古の優先度合い
  • そのパートに一体いくら時間がかかるか・かけられるか

などを計算して、適当な時間の配分をするのです。

また、新作の振り写し中などは、

  • どのパートの稽古か
  • どのダンサーが必要か
  • 時間はどれだけかかるか

を振付家から聞き出し、予定を組んでいきます。

大きなバレエ団には直属の秘書がいますので、彼らが主体となって計画を立てます。なんといっても大規模な団には大抵バレエマスターが数人、スタジオも幾つかありますので、スムーズに計画するためには秘書というまとめ役が不可欠でしょう。

規模が小さいところではバレエマスターが一任したり、バレエ監督と分担したりしています。

舞台の上演に関するアシスト

更には、舞台の上演に関する裏方的なアシストまで。

本番の進行を取り仕切る『舞台監督』や指揮者、その他照明・音響などとダンサーとの橋渡しをしたり、安全面での点検や小道具の確認を行ったりもします。特に舞台リハーサルが始まると、注意事項や変更・改善点は常に共有していかないといけません。情報がなかったために誰かが怪我をしたりといったことは、あってはならないですからね。

本番中には、不測の事態にも対応できるよう舞台袖に控えている方が多いのではないでしょうか。また、客席後方からダンサーへ踊りの注意点を書き留めるという方もいらっしゃいます。これはもちろん、次回の公演に活かすためです。それは充分わかるのですが、たまに袖から存在感を撒き散らして本番を凝視している方がいらっしゃいます。あれは筆者としてはすごくやりにくいので、やめて頂きたいです。笑

バレエマスターになるには?

多くの指導者がダンサー引退後、現役時代のコネクションをフル活用して指導者に移行するというケースは多くみられます。けれども、プロ経験が必ずしも必要というわけではないようです

ドイツには『ダンス教育学』のある大学もあり、修了すると学士の学位を得ることができます。筆者の周りでも、指導者への道を歩むと決心したダンサーは大学で学ぶ方が大半です。学歴を重んじるドイツにおいて、就職の際にはやはり有利に働くのかもしれませんね。

この職がすごく重労働だということを記事内でここまで前面に押し出されてもなお、気になった方がいるかどうかは分かりませんが、興味の湧いた方はぜひ調べてみて下さいね! めざせ、バレエマスターッ!笑

まとめ

いかがでしたか? 劇場付きバレエでは実は、「舞台が成功すればダンサーのおかげ、失敗ならバレエマスターのせい」なんて言われてしまうほど、損な役回りの職業です。トレーニング内容を考えるなど、業務の多くを勤務時間外にもこなしていますので、熱意がなければなかなか務まらないですよね。

もう一度おさらい致しますと、

  • 振付家のアシスト
  • バレエ監督のアシスト
  • ダンサーのアシスト
  • 稽古計画表の作成(または秘書のいる場合、提案)
  • 舞台上演に関するアシスト

これらの業務をこなすため、日々劇場を駆け回っているのです。

経験豊かなバレエマスターは技術面で非常に頼もしく、また、ダンサーや振付家を精神的にも支えてくれる貴重な存在。

あまり脚光を浴びる機会はありませんが、この場を借りて改めて感謝したいと思います。彼らの影なる働きのおかげで、お客さんもポップコーンのようにあちこち好き勝手に弾けるダンサーを見せられずに済んでいるのですから、ありがたいですね!笑

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