こんにちは! ドイツの劇場でバレエダンサーとして働く、筆者の川端(@ChihoKawabata)です。
なんとも…おだやかでないサブタイトルがついてますね。笑
今回はバレエや芸術に取り組む方のみにとどまらず「できない自分に苛立ちを覚えてしまう」全ての方へ向けた記事です。
すこし心が軽くなるかもしれない。ちょっとくすっと笑えてまた明日から頑張ろうと思えるかもしれない。そんな内容です。
少なくとも筆者は、ほんの何年か前のがちがちに力みすぎている自分を、こんなふうに励ましてあげたいとは思います。
ささ、今のうちにお気に入りのお飲みものをご用意なさって。
くつろぎながら、ゆるりとお付き合いくだされば幸いです。
なぜバレエダンサーの精神はおかしくなってしまうのか
精神を病んだダンサーの話は、ちらほらと耳に入ります。(あまりにヘビーな話になってしまうのでここでは割愛します)
私自身も、今までストレスとうまく付き合えてきたかというとそうではなく。物で発散したり、自分や他者にあたってしまっていた時期もあります。
ダンサーの苦悩の背景には「人間関係の摩擦」や「理想との乖離」、また「環境の変化に耐えきれず」といったものがあるかと思います。
それらはもちろん、メンタル不調の要因に大いになりうるでしょう。
けれども、それらは比較的分かりやすく「ちゃんとストレスの顔をしてやってくる」からよいのです。
大なり小なり「うわぁぁぁダメージくらったー」と痛みをともなってがっつり傷もつくし、そうなるとどうにか対処しようとするし、治っていくのもなんとなく感じることができますから。
もっと厄介なのは「まるで正義づらをして私たちの心を日々むしばむもの」。
上達したい、美しくありたいと練習に励めば励むほど、すぐそばに寄り添っているのではないでしょうか。
それは「継続的な自己否定」です。
自己否定は、しないほうが無理というもの
お稽古とは、できていない自分の姿を延々と見せられ続けることです。そう、お稽古に取り組んでいる限りそれは続きます。
意味がないとは分かっていても、他者と自分を比べてしまうひともいるでしょう。
幸いそのループから抜け出せても、今度はひたすら過去の自分との戦いです。
「だめだ、昨日はできたはずなのに」「だめだ、さっきの感覚と全然違う」「だめだ、昔のほうが」「だめだ」「だめだ」
自分に対するダメ出し、というのは上達への近道であると同時に、登山道でもあります。だめ、を積み重ねて高くすればするほど、上のほうでは息ができなくなる。
息も絶え絶えに、あなたは叫びます。
「こんなぐらい、できてあたりまえなのに!!!」
それをきっかけに噴火します。涙は止まりません。
そんな状態になってまでも練習を続けてしまうのですから、もう、ほんとにしんどいですよね。その気持ちはとてもよく分かります。
一呼吸。はくぅー。すぅー。
できてあたりまえ、なんてことはひとつもない
筆者は日本でもドイツでも素晴らしいクラスメイトや先輩後輩に囲まれすぎたせいなのか、いつしか、
「かんたんなことも、むずかしいことも、できている状態があたりまえ」
だと考えるようになっていました。できているダンサーだらけのなかで、そんな価値観が確立するのは避けようがなかったと言えます。
こう言い聞かせることで強くいられるなら、それでもいいんですよ。
でも、もしそれがご自身を追い詰めているなら…。このまま読み進めてください。
私ね、いま33歳で、年の功かどうかは知りませんけども(笑)ここ最近になってようやく気付いたのです。
世の中に「できてあたりまえ」なんてことはないんだと。
それは全てあなたが心がけていたり、時間をかけた苦労の果てに手に入れた結果です。そうなんです。
いや、だいたいやで?
あたりまえなんて言いだしたら、他者にやさしくすることだって至極あたりまえで、でもそんなシンプルなことすら時々死ぬほど難しいのに!
つま先で立って! ターンアウトして! 脚上げる!
できなくったって、そんなんあたりまえやん!!
せやけどどないかしてやったろうって、なんとか諦めずに頑張ってるやん!!
それってめっちゃすごいことやん!?
ほんまは「できなくてあたりまえ」やで!
私らは、できなくてあたりまえの世界に生きてんねやで!!!
たまには自分で自分に「できひんのにやっててすごいな! えらいな!!」って声かけてあげなはれ!!
おっ…おうおう。ついヒートアップしてしまった…。笑
そうなの。べつにバレエだけじゃないよ。この世はできないことだらけ。
ダイエット、筋トレ、早寝早起き、健康的な食生活、一日一善、元気にあいさつ、いつもにこにこ笑顔で、自分にもひとにも地球にも優しく。
したほうがいいことと心から思ってはいても、実際はできないことのほうが多いでしょ。
分かりきってるけどね、産まれたばっかりの赤ちゃんって歩けないのよ。2年はまともに言葉も話せないし、文字だって習ってやっとよたよた書けるようになるのよ。海外に来ると「漢字ってすごいね、一生かかっても習いきれない量なんでしょ。ありえない!」ってなるんよ。
色々なこと、できないのがデフォルト(初期状態)なんよ。そうでしょう。
それを、ましてやバレエなんてよく分からないものに立ち向かって、あがきながらでもやろうとしている。
そんなあなたを、自分も誰も、否定したらいけないのよね。そうでしょう?
自分を味方につけよう
自分にだめと言い続けるのは精神衛生上よくない。
けれどもダメ出しをしないと上達しない。
そんな私みたいなあなたは、自分を味方につけよう。
「もうちょっとこうしてみたらどう?」
「さっきより良くなったと思う! もう一度、今度はこっちにも気を配りながらやってみる?」
「この問題って、原因は他のところにあるんじゃないかな?」
だめ、を封印してその代わりにもっともっとアイデアを増やしてあげる。
三人寄れば文殊の知恵、とは言うけれど、注意をくれる先生やクラスメイトだけじゃなく、自分も味方にしてしまうとこれがほんとに、案外頼もしいのなんの。
自分のアイデアじゃまだちょっと頼りたいな、とか、他のひとはどんなことを考えて踊ってるのかな、なんてことを知りたい方は、こちらの記事を読んでみてくださいね。筆者の考え方をぎゅぎゅっと濃縮したまとめページです。自分の踊ってきた30年間を誰かのお役に立ててはもらえまいかと、随時更新しておりますゆえ。
↓バレエ上達へのまとめページはこちら↓
おわりに
頑張っているつもりなのにできない――。
報われない時期が続くと、歯がゆいですよね。
でも、また次「こんなぐらいできてあたりまえなのに」と、できない自分に苛立ちを覚えたときや己を責めてしまったときには、きっと思い出してくださいね。
できなくてあたりまえの世界。それでも諦めずに挑戦してる自分は、未熟でもすごい。
自分を否定してるひまなんてないぜ! 今日もがんばってこー! おー!!
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