『ドイツ歌劇場付きバレエ団』の現在 ~契約や作品傾向など~

バレエ

中世のヨーロッパから始まり、人々を魅了し続けるバレエ。そしてプロのバレエ団は、今や世界中に散在しています。

普段バレエと接点のない皆さんは、団に所属するダンサーに階級があるのをご存知ですか?

主役級を踊る団内トップの方々や、常にグループで踊り「数の力」で観客を圧倒する方々。『プリンシパル』や『コールドバレエ』など、それぞれに肩書きが与えられています。

とは言いますが、サーチエンジンで検索すればいくらでもヒットする、バレエカンパニー内の階級のことを書いても新鮮味はありません!

ですのでこの記事で、ドイツ歌劇場の今日において積極的に採用されている契約のスタイル上演される作品についてご紹介しようと思います。そのために記事に「ドイツ歌劇場~」と銘打っているんですものね。

それでは参りましょう!

ドイツのバレエカンパニーには階級がない?

上の記事で『劇場』と『劇団』の違いについて書きました。

その際、筆者は自身の職業を分かりやすくするため「ドイツ歌劇場会社・バレエ部署に勤める平社員」と一般の会社になぞらえました。その表現ですと、おそらくバレエに携わる方以外にも「なるほど、この人はカンパニーの中でも階級が低いのか」と感じる方もいらっしゃるかと。

実力はさておき、筆者の所属するバレエ団には階級が存在しません。むしろ今やドイツのバレエ団では階級が存在しないのがスタンダード

ドイツ歌劇場に付属するバレエカンパニーの数は60を超えます。そこから9つだけを除いた残りのカンパニーは、団員全員が一律の契約なんです。(2020年8月現在)

「へぇ~。ドイツでは、ダンサーも平等に扱うんだね!」

…というわけではなく。理由はたんに、資金の節約!! これに尽きます!笑

なぜ階級がないことが節約につながるの?

通常、団に階級が存在するのならそれに見合った役柄が与えられます。

と言いますのも、グループでしか踊らない契約のはずの『コールドバレエ』の方が、一人で踊る『ソロ』を任せられた際は、本番ごとに特別報酬が給与に加算される決まりになっているから。つまり劇場がダンサーに「実力以上のものを頑張ったごほうび♡」を与えなければならないのです。(参照:NVBühne Tarifrecht §92/Stand Jan.2017)

「じゃあ元からグループもソロも踊る契約にしておけば、報酬も発生しないんじゃ?」

正にそういうことです! 規模の大きいバレエ団では「適材適所」も可能ですが、中小規模では全員に何かしらのソロを踊ってもらわなければ成り立ちません。その度にお財布を開けなければならないのは、劇場側としては現実問題つらいのです…。

ドイツのバレエ団の存続をかけた契約スタイルの誕生から普及へ

個性を持ち、主役を張れる人材のみを中小規模のバレエ団が必要としているのはそういった切実な理由から。

ソロ義務付きグループ契約

この契約スタイルは、中小規模の劇場が演目の多様性とバレエ団の存続をかけて編み出した、起死回生の策。今では、ドイツのバレエ団に広く普及しています。

古典バレエの上演

前述からもご理解いただけるかと思いますが、国や州・市から補助を受けているドイツの公立劇場でも、実は全ての劇場が順風満帆の運営状況というわけでは決してありません。(新型コロナウイルス以前からです。2020/21シーズンからの運営はもっと厳しくなりそう…)

古典バレエを上演しようとなると30人ほどのダンサーが必要になってきますが、実際にそれだけの人数を確保できるところはそう多くはないのです。

ベルリンやミュンヒェンといった大劇場のバレエ団では団員数も50人以上と豊富で、他の州立歌劇場に付属するカンパニーなどでおよそ20~30人ほどです。そして筆者の勤めるカンパニーは16人。一気に減りましたね。ですが、もっと少ないところでは10人以下です。

「えっ? さっき古典は30人必要って言っていたけど、バレエって10人以下でできるの!?」と驚かれるでしょうか?

はい! しかし正確にお伝えしますと、振付や内容はそのままというわけにはいきません。

あらすじ(解釈)を少し変えてみたり、曲数を減らしたり、もしくは振付を1からあてがったりと工夫を凝らしたうえでの上演は可能なんです。有名な曲や演目で集客を狙えるので、「古典演目のアレンジ」は多くの劇場で見られます。

ただ、ダンサーの人数が少ないと舞台からはけた途端、猛ダッシュで早着替えに移らないといけないので大変です。「指揮者が気まぐれにテンポを速く振っちゃったらもう間に合わない」くらいギリギリなんです。冗談抜きで。

現代バレエの上演

クラシックバレエを踊ることに専念したいダンサーの方は、もしかしたらドイツには向いていないかもしれませんね。

なぜならドイツでは規模に関わらず、どんな劇場のバレエ団でも「現代バレエの演目を取り入れているか」「それ一色か」のどちらかですから。「本来(原型)の振付をとどめる古典バレエのみ」を上演しているところは、今日ではもう存在しないのです。

と言えども、食わず嫌いはもったいない! 幅広い分野に挑戦してみてほしいというのが筆者の願いでもあります!

ドイツ各地でネオクラシックから革新的な作品まで、多様な現代バレエが鑑賞できます。各カンパニーの規模やカラーの差異がその多様性に、より一層の幅を持たせているのであろうことは、想像に難くありません。

そして、才気溢れる振付家が次々に発掘されているのも理由のひとつでしょう。

ダンサーという素材は同じでも、曲やコンセプトといったスパイスでうまく調理すれば、色んな味の演目が楽しめます。まるでお料理みたいですよね。

さながらコックさんのような振付家。彼らの手腕が、ダンサーの多面的な魅力を引き出してゆきます。お客様には、存分に味わっていただきたいものです!

まとめ

ダンスは現代の振付家・作曲家や美術方面の才能、そしてマッピングなどの最新テクノロジーの出現を取り入れつつ、日々進化し続けています。

ドイツ歌劇場付きバレエ団においては公的支援があるからこそ、そういった「ダンスの可能性の模索」に恐れることなく取り組めるのではないか、と筆者は考えます。

記事はおしまいになりますが、お楽しみいただけましたか? バレエやダンス、そしてドイツの劇場に少しでも興味がそそられたのなら幸いです。他にもドイツ歌劇場について書いていますので、お時間が許すのならぜひぜひ覗いていってみてくださいね!

コメント

  1. 矢口 友朗 より:

    ドイツの劇場事情について興味があり、読みました。ひとつ気になった事は、日本のバレエの発表会では曲のテープ再生の団体も多く見受けられますが、ドイツの場合はどうなのでしょうか。プロの上演については日本も生演奏が多いとは思いますが。

    • 川端 千帆 川端 千帆 より:

      コメントありがとうございます。
      上演はオーケストラでの演奏が望ましい演目は、そうしています。現代音楽でも編成や内容により、オーケストラが演奏できるものとそうでないものがありますので。
      しかしコンセプトによっては既存の音源を使用したい場合も。その際は曲の著作権を保護する団体に申請し、通れば使用できる、という流れになります。

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