ドイツからこんにちは! 今回は筆者、川端の現在の職場でもある『Theater Koblenz』の魅力をお届けしたいと思います!
劇場の外観が初見殺し
初めてこの劇場を訪れた方は、その存在に気付かずまず十中八九通り過ぎてしまいます。劇場というものに馴染みがあるはずの筆者でも、入口がよく分からなくてうろうろしてしまったぐらいですし。笑
といいますのもこの劇場が、他と違って建物と建物の間に埋め込まれているからなんです!
皆さんはドイツや海外の劇場というと、ババーンと独立した建物を思い浮かべませんか? それがサムネイルのように街の風景に馴染んでしまっているのだから、少し驚きですよね。
メインステージでも470の観客席というこじんまりとしたこの劇場は1787年、最後のトリーア大司教であり選帝侯でもあったクレメンス・ヴェンツェスラウス・フォン・ザクセンの命により建てられました。劇場建ててクレメンス…(←ネットスラングですね笑)
また立地としては彼の居城(エレクトラルパレス)の斜向かいにあたります。彼が観劇に訪れた際は2階席の紋章付き桟敷、つまり特等席に腰かけていたことになりますね。
今はコロナ対策として換気用のダクトが付けられてしまい、少々お見苦しくはありますが。
さて、この『オペラ、芝居、舞踏会そして社交場』の案件を担当した建築技師ペーター・ヨーゼフ・クラーヘは苦心したわけです。
左にはスパークリングワインで有名なダインハルト社、右にはトリアラーホフというホテル。この間に劇場を組み入れ、かつ調和させなければならなかったのですからね。建築的にも後方にしか伸ばすことができません。クラーヘさんも「くそー!」と悪態をつきたかったことでしょう。これがほんとの「くそクラーヘ」なんちって。(18世紀後半にねじこまれる昭和テイスト)
しかし彼はこの制限をうまく利用しました。正面玄関から客席、そして舞台から舞台後方の大きさを1:1にすることで客席と舞台が間近に感じられ一体となれる、然るべき距離感を生み出すことに成功したのです。
客席のバルコニーや天井はよく見ると…!?
視覚のトリックはそれだけではありません。
先ほどのような引きの画像では分かりにくいと思いますが、バルコニーの美しい水色の垂れ幕そして天井の彫刻のような模様は全て、単に描かれたもの。だまし絵なのです!
とある旅の口コミサイトでは「まあ田舎の小さな劇場ですし、ご愛嬌でしょう。笑」みたいに書かれてしまいますが、とんでもない!! クレメンスの名誉にかけて訂正しておきますが、これは当時最新の流行だった装飾方法というだけのことです。現在のうちの経済状況ならまだしも。笑
筆者が感じる欠点
もちろん長所ばかりではありません。筆者が感じるのは、
- オーケストラピットが狭い
- 大編成時は入りきらないので、オケが舞台上の後方に入らなければならない
- 前述のため必然的に、指揮者と歌手のコンタクトはモニターを通して行われる
- 座席の列間隔が、航空機のエコノミークラス並みに狭い
- 膝を伸ばせない
- 席に着いてから中の方に人を通すとなると結構せせこましい
- プロセニウム(柱)のせいで特に2・3階席の両端は舞台の見通しが悪い
- 代わりにチケットは格安(筆者は同僚のオペラを聴く時はここでよい。笑)
- 動員数は少ないとはいえトイレが狭く、数も足りていない
- 今現在のコロナ禍では不安材料になる
ざっと思いつくのはこの辺りでしょうか。
足の悪い方は、端っこの席を確保するのがよいかもしれませんね。足を伸ばせるだけでなく、途中で退室したくなった際、人が立たないと通れないほど狭い通路に立ち向かう勇気を振り絞らなくていいので。笑
あと、裏口もめっちゃ普通ですね!!
こんな感じ。左下の木のドアが、従業員専用裏口です。開いているドアは食堂。ドア裏にこっそり白チュチュの筆者が見えている…笑
あっそうだ、うちの劇場の最高にいいところがありました! 食堂が出入口のすぐ隣に位置していることです!!! これはまじで自然と人が集うようになるので活気に溢れます。素晴らしい設計です。
まとめ
いかがでしたか?
230年以上の歴史を誇るこのシアターコブレンツは、中部ライン地方で唯一現存し、上演が続けられている新古典主義様式の劇場。
プレミエではよそ行きに包まれた方ばかりとはいえ、普段の公演はラフな格好の方ばかり。地域にとっても身近な、リラックスできる劇場なんです。
その洗練されただまし絵のクオリティ、そして私共の多彩なプログラムを、ぜひ一度間近で見ていただく存じます。(宣伝ばっちり)
お会いできるのを楽しみにしております。それでは~!
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