ドイツの劇場にはどんな職業の人が働いているの? ~食堂編~

バレエ&劇場
Photo by Nielson Caetano-Salmeron on Unsplash

 

こんにちは! ドイツの劇場でバレエダンサーとして働く、筆者の川端(@ChihoKawabata)です。

ドイツ歌劇場シリーズ、今回は『食堂』編♪

賑やかで人間味あふれる、劇場の中心地についてお伝えしたいと思います!

待ってました~!」って感じですよね。「これぞ舞台裏!」みたいな!笑

知り合いの音楽家から、かのクリスティアン・ティーレマン氏の面白情報もゲットしましたので、そちらも併せてお送りしたいと思います。笑(筆者はこのネタで永遠に笑ってられる)

それでは早速、参りましょう!

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Kantine=カフェテリア

ドイツ語では食堂のことを、『Kantine(カンティーネ)』と呼びます。英語の『canteen』にあたる言葉ですね。皆さんにはおそらく、同じ英語の『カフェテリア』という言葉が最も馴染み深いでしょう。

カンティーネは、様々な用途で使用されます。たとえば…

  • 食事する
  • 休憩する
  • 待機する
  • 会議する
  • 待ち合わせする
  • 仕事の一環で反省会
  • 仕事終わりの飲み・打ち上げ
  • サッカー中継を観戦

最後!!笑 これはきっとドイツだけではないだろうな、とは思いますが…。

ではひとつずつ見ていきましょう!

食事する

まずは食事。

安くてお腹いっぱい食べられますので、自炊をしない方や時短目的でカンティーネを利用する同僚は少なくありません。

お料理は、カンティーネで働く方が作ってくださっています。

筆者の劇場ではフードロスを減らすため「ランチのメニューは当日○時までに頼むこと」と定めるなどの取り組みも。サンドイッチやウインナーなどの軽食は、作り置きがきれていても、頼めばすぐに作ってくださいます。

こちらもうちの劇場あるあるで恐縮なのですが、毎週土曜日はケーキを焼く日♡ お昼どきには2階上の廊下までい~い香りがして、つい「今日は何のケーキ!?」と覗いてしまいます。うちではカンティーネは従業員裏口のすぐ隣と好立地なぶん、誘惑も多いです!笑

休憩する(ツケ有)

軽食目的や、交流という視点から見ても、休憩時間をカンティーネで過ごす方は多いです。

カンティーネは大体の社員食堂がそうであるように、カウンターがあり、注文のため並ぶ(または各自で料理をトレーに乗せていくなど)セルフサービス方式

休憩に入るとわっと人が押し寄せますので、『ツケ』のシステムもまだあるんです!

お金を払うのにかかる時間を減らすためですね。名前の隣に値段を書き留めてあり、混んでない時間帯に一括で払うんです。

信頼関係がなければできないことですね♪

バイロイト音楽祭でのティーレマンの小話

上記の『ツケ』に関するクリスティアン・ティーレマンの、バイロイト音楽祭でのお話です。

バイロイト音楽祭は1年のうち、ある期間だけしか開催されないので、カンティーネは臨時アルバイトを雇っていたんでしょうね。

支払い時にツケを希望したティーレマンに対し、バイトの方が「あなたのお名前は?」と返したそうです。この音楽祭のトップ、ドイツの宝とも言える人物に向かって!!

これだけでももう爆笑ものなのですが、それに対する彼の答えがまた素晴らしい。

Ja, ich arbeite schon ein paar Jahre hier…

(うん。僕もう何年かここで働いてるんだけど…)

あの強面が想像つきますね。笑

彼の後ろに並んでいた筆者の知人の音楽家は、ヒヤヒヤするやら笑いを堪えるやらでもう気が気でなかったそうな…。

Image by Romain DEL BUONO from Pixabay

待機する

リハーサルや本番時に、出番を待つときにもカンティーネは使われます。

待機する場所としては、もちろん楽屋もあります。

けれどほら、楽屋って男女はもちろん、分野ごとでも分かれてるんですよ。

カンティーネでも呼び出しアナウンスは聞こえるので、こちらで待っていた方が幅広く交流できるし、誰が呼ばれたかも一目瞭然でいいんです♪

会議する

簡単な打ち合わせ程度ならカンティーネでコーヒーでも飲みながら、なんてことは珍しくありません。

情報が漏れると困る重要な会議には、もちろん使われませんが!笑

待ち合わせる

集合場所としても。

オーディションにいらした方がカンティーネに通されることも珍しくありません。そこで迎えを待ったり、伴奏者と落ち合ったり

ホワイエや劇場付属レストランなどといった「初演の打ち上げ会場」に向かう際の集合場所としても使われます。出演者は、一同に打ち上げ場所へ赴くケースがおそらくほとんどですので。(お客さんをお待たせてしているので、初演後でも超特急で支度を整えてます!)

仕事の一環で反省会

初演までいよいよ大詰めとなり、メイクや衣装付きのリハーサルが始まってくると、注意点の確認はその日のうちに済ませてしまうことがあります。

といっても大規模に集まる(合唱やバレエ)場合は、舞台やスタジオが使われます。注意点を授けるのは各分野の監督・助手、または演出助手が担当。

同じ場で同時進行だとやかましいので、ソリストなどが演出家と共にカンティーネに避難するというわけです。

仕事終わりの飲み・打ち上げ

もう言わずもがな。覗けば誰かが飲んでいる。それがカンティーネです。笑

愚痴大会を開いたり、芸術について熱く語ったり…。

カンティーネって、そういう場です。

筆者も昔は毎日通ってたなー。

当時のバレエミストレスと夜中0時とかまで反省会したこともあったな。あれはとある初演の2日前。その日にやっと振付が終わったばっかりだったから当然なんだけど、踊りが全く揃ってなかった。皆でビール飲んでたら彼女に捕まったんよな。ビール飲みながら「音に遅れてた」とか延々聞かされる(笑) でも皆彼女のこと信頼してたから、真剣に聞いてた。

ダンサーなのに、音楽家のコンサート後の打ち上げにも参加させてもらってたな。木曜日のにんにくナイト。カンティーネには食べるものがあるのに、にんにくをたっぷり使った料理を持ち寄る、っていうフリーダムな伝統。ドリンクをそこで頼むから許されてる。笑

初演後の打ち上げ、お客さんとの堅苦しいのが終わったあとは皆カンティーネに戻ってきて、音楽かけて踊ったりしたな。あのとき劇場は24時間ずっと開いてるものだったから、明るくなってから帰路につく、ってかんじで。真夜中の劇場探検とか、悪さもいっぱいしたなー。笑

年配の方が語ってくれる昔のカンティーネは、毎晩がまさに「どんちゃん騒ぎ!」ってかんじで。当時の写真を見せてもらうと「でしょうね!!」って頷ける。

現在はこういった施設の中では全館禁煙になってるけど、以前はタバコの煙でそりゃあもう、すごかった! 非喫煙者の人権なんて、ないに等しかった。

現代はおとなしいもんです。いいとか悪いとかじゃない。違う時代なんだなって感じ。

でも、愚痴大会と芸術議論がそこで開催されることだけは、きっとこれからも変わらないでしょうね。

サッカー中継を観戦

サッカー中継の観戦。

最後に「まじめにやれ」とツッコミが入りそうな目的がきました。笑

私たちは週末に舞台を上演しますので、サッカーの試合と被っている日も多くあります。中継を見ようと、出番の合間に一目散に、テレビのあるカンティーネへと駆け出す人も。(そして戻ってくると「3ー1になった!」と舞台上にひそひそ伝達される)

ワールドカップの時期は特に白熱してます!笑

終わりに

筆者にとってカンティーネは、スタジオや舞台と同じくらい数多く強烈な思い出があり、苦楽を共にした場所。

それだけ交流が盛んで、仕事・寛ぎ・騒ぎを全て受け止めてくれる多目的な場所だからこそです。従業員を吸い込んでは吐き出す様は、まさに全身に血を送る心臓そのもの。劇場の中心地と冒頭にお伝えしたのは、大げさでも何でもないんです。

それをより身近に感じていただけたらと、実例たっぷりでお届けしてみました! いかがでしたか?

ティーレマンの小話は笑うしかないですよね。情報提供してくれた知人に感謝です。笑

それではまた~!

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