ドイツのバレエダンサーが大して有名でもないのにブログを始めたのはなぜか? ちょっと恥ずかしい初志について、絶対誰も読まないだろうから書いとく

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今まででいちばん長いお休みの始まり

今からさかのぼること3か月半前の、2020年3月13日。

私の勤めるコブレンツ市劇場は、今後予定されていた全公演を無期限で休止する決定を下しました。そして翌週の18日、メルケル首相の演説が行われた日より、一切の業務の停止を余儀なくされました。

一切、というのは少し語弊がありますね。実際には劇場の首脳陣は様々なケースに対応できるよう、来る日も来る日もプランを練っていました。

新型コロナウイルス(Covid-19)について確かな情報が少ない中、切望にも似た計画はどんどん潰されてゆきます。心を折られるような作業を続けていてくれた上司達には本当に頭が上がりません。

今もなお多方面から私達を追い詰めるCOVID-19

6週間に渡る自粛期間中には、世界中に散る同胞とオンラインでお話をしました。

特にアメリカにいる友はバレエ団存続のためにレイオフ(一時解雇)されてしまい、その間は失業手当でなんとかしのがなくてはならないという過酷な状況にありました。しかも彼女によると、若い研修生たちは正規雇用としてみなされておらず、失業手当すら出ないというのです。

私は言葉を失いました。なぜならそれは夏季休暇を含めると少なくとも半年の間、収入がゼロであることを意味しているから。

金銭的に常にギリギリだとしても希望を持って、夢を抱いて働いていた若者たちは、自粛解除までどうやって生き伸びればよいのでしょうか?

また私には沢山の音楽家の友人がいますが、とりわけフリーランスで活動する方の収入は著しく減ったと言わざるをえません。許せない事に、「好きな事だけしてきたのだから自業自得だ」と職業そのものを貶めるような発言もされたと。

だったら私はその発言者にはこれから先どのような音楽を聴くことも、電車に乗ることも、美容室に行ってほしくもありません。ええ、私は憤慨しています。水道の蛇口を捻ることすら禁じたいです。

人間社会の歴史はどのように紡がれてきたのか?

そのような身近な想像力すら悲しいことに、Covid-19は奪っていったのかもしれません。

生きるために必要不可欠なアーティストたち

つまらない仕事を選ぶのが悪だ、などという極論を述べるつもりでは毛頭ありません。

2020年3月23日、ドイツ連邦政府のグリュッタース文化大臣は、国民を襲うこうした大きなショックからの復興には、芸術の持つ力が必要不可欠であると発表。そして零細企業・フリーランスの方々には緊急支援枠として500億ユーロ(1ユーロ=120円換算で6兆円)を適用し、早い段階から支給したのです。

また、この国には大量の失業が懸念されるこのようなケースへの対策として、会社が申請をすれば短時間操業にできる制度などがあります。その制度を利用する事で心拍数を下げ、生命維持を最優先した会社は国全体の30%にも及びます。

もちろん知人友人の情報から、沢山の劇場がそれを有効活用したとも聞いています。

自粛中に訪れた気付き

私、川端千帆は18歳からプロのバレエダンサーとして劇場で働いていて、今までずっと自分のスキルを磨くことに一生懸命でした。高慢甚だしくも、私は自分が努力することで職場に貢献しているのだと信じていた。

けれどこんな苦境に陥って初めて、自分が脇目もふらずバレエに打ち込めるのは、誰かがこの環境を整えてくれているおかげなのだと思い知りました。

自粛中にもお給金が滞りなく発生し、私は街中では気を配りながらも、家では安心して仕事が再開されたときのコンディション維持にだけ努めていればよかったのです。

私は守られているのだ、と気付いたとき、今まで積み重ねてきた驕りに強烈なパンチをくらわされたような衝撃が走りました。

齢30も過ぎたというのに、誠にお恥ずかしい限りです。

ちほの恩返し

劇場に少しでも返せるものはないだろうか、と考えてみたのですが、自由参加だった劇場発案のデジタル配信にのっかるぐらいのことしかできないのが歯がゆくもあり。これまで何の発信もせずに、細々と自己中心的に働いていたのが今になって悔やまれます。

それでも、時間の取れる今のうちに自分の体験や所見を書き残しておこうと、こうしてブログを立ち上げた次第です。

私はドイツという国について、経済のことや政治のことなどはほとんど分かりません。けれどひとりのアーティストとしての活動を支え続けてくれたこの国や、職場である劇場のことなどを(多少ひいき目な視点から)、愛をこめてお贈りしたいと思います。

ほんの少しでも発見があったり、魅力を感じたりしてもらえるなら、こんなに嬉しいことはありません。

川端千帆

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