今回の記事では『劇団』『歌劇団』『劇場』『歌劇場』のそれぞれ持つ意味や違いについて、なるだけかんたんにご説明していこうと思います!
筆者自身は2006年から14年間「ドイツの歌劇場に所属するバレエダンサー」です。
日本で知り合う方にそうお伝えしますと、舞台芸術などに普段からあまり馴染みがなくとも「劇団〇〇みたいな?」や「〇〇歌劇団みたいな?」と皆さん聞き覚えのある、劇団や歌劇団という言葉を用いて理解を深めようとしてくださいます。
その歩み寄りの姿勢が筆者には嬉しく、また、そういった疑問を抱く方は決して少なくはないのだと気付くよい機会でもありました。
4つの言葉の用途に混乱している方や、理解を深めたい方の手助けになりましたら幸いです!
劇団・歌劇団
劇団は、演劇を上演する際に不可欠な「俳優や舞台裏方の専門家+運営」を内包する、独立した団体を指しています。
演目の一部に歌や踊りの要素が含まれていたとしても、「演劇に軸を置く団体」という意味合いで使っているところがほとんどではないでしょうか。
また、歌劇団は欧米ではその名の通りオペラの団体ですが、日本ではミュージカルを扱う団体を指すこともあるようです。
日本国内で多くの割合を占める中小規模劇団は、劇団員やスタッフが固定でなかったりするところも。また、あるプロジェクトのために制作側が演者やスタッフを募集する、という形も多くとられています。
オーケストラは規模に関わらず、付属するケースとそうでないケースがあります。
劇場・歌劇場(施設の名称)
英語では劇場も劇団も同様に「theater」と呼ぶのが、混同してしまう原因でもあるのかもしれませんね。
劇場と歌劇場には、
- 施設の名称
- 団体の呼称
の2つの意味があります。
前者の劇場は「演劇・バレエ・オペラ・歌舞伎そしてコンサートなどの音響ないし舞台芸術を上演するための施設」を指しています。
- 客の座る『観客席』
- パフォーマンスを行う空間『舞台』
- 舞台装置などを収納する『舞台裏』
- 演者の控室『楽屋』
以上の特徴を備えた建造物の名前、ということですね。「〇〇ホール」などとも同一視されます。
そして歌劇場は上記に加えて『オーケストラピット』を舞台と観客席の中間に設置し、「よりバレエ・オペラの上演に適した設計で作られた施設」のことを指します。適した設計、というのはここでは音響効果に貢献していたり、舞台転換に実用的であるということです。
(オーケストラや、オーケストラピットについてはこちらの記事に↓)
劇場・歌劇場(団体の呼称)
その一方で後者は、「劇場を本拠地(職場)とし、その運営+舞台上演に携わる専門家たちの団体」の呼び名といったところです。
特に欧米では両者の意味は直結して認知されています。例として「ベルリン・ドイツ・オペラ」と聞けば、歌劇場の施設そのものかオペラ団体のどちらを指しているかを文脈から判断するのです。
劇場がひとつあれば、そこに専属のオーケストラとオペラ団体、そして運営と舞台製作に携わる部門が併存しているのが容易に想像できるということですね。
それに加えてバレエ団、演劇団や人形劇団までも内在する劇場は、ドイツ語圏が圧倒的に多いとされています。そう、ここで演劇団としているものが正に前述の『劇団』のことなのです。
通常それぞれの芸術家団体が組織として独立した機能を果たすにはアーティストだけでなく、劇作家・演出家や照明、衣装といった舞台制作に従事する部門が必要不可欠。
けれどもそういった専門家たちを専属で雇い、彼らをシェアすることにより多彩な演目を上演することが可能になるというわけです!
以上をふまえた筆者の自己紹介
ドイツの歌劇場専属バレエダンサー。というともう、ある会社の一員であるというイメージがぱっと湧きましたか?
一般的な会社にも運営陣がいて、部門に分かれて、部署があって…と続いていきますよね。それになぞらえるなら筆者は「ドイツ、コブレンツ市歌劇場会社・芸術家部門・バレエ部署・平社員 川端千帆」というふうになります。平社員ダンサーです。笑
日本国内では「劇場専属の芸術家団体」自体が希少ですので、そのイメージには直結しないかもしれません。
ですがこの記事で、欧米に見られる「劇場専属〇〇」や「劇場付き〇〇」といった前置きが、劇場という職場に勤務しているという意味に繋がることが、少しでもご理解いただけたのなら幸いです!
まとめ
- 劇団・歌劇団=団体
- 劇場・歌劇場=団体 or 建造物
- 劇団が劇場や歌劇場という団体の中に存在する場合もある
いかがでしたか? ご不明な点がございましたら筆者までお報せください!
また、このブログではドイツ歌劇場に勤務する人たちについても紹介していますので、ぜひぜひ関連記事を参考にして下さいね。
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